肘の外側が痛いっ!

今回は“肘の外側の痛み”について。
日常生活やスポーツ、お仕事等で“肘の外側に痛みを感じる”という方、
それはもしかすると「上腕骨外側上顆炎(テニス肘*)」かもしれません。
*スポーツではテニスに関連する疾患であるため、
「テニス肘」とも呼ばれることもあります。
1: どんな症状なの?
・タオルやぞうきんを絞る、重い荷物やフライパンを持ち上げる、
ペットボトルやびんなどの蓋を開けるなど日常生活動作で肘関節の外側に痛みを感じる。
・テニスのバックハンド動作、バドミントンや卓球などラケットを使う、剣道等スポーツで
同じ動作を繰り返し肘関節の外側に痛みを感じる。
・キーボードを打つ、マウスの操作などデスクワークや勉強などで肘関節の外側に
痛みを感じる。
多くは安静時には痛みがなく、上記のように手を動かす作業をする人に多く発生します。
2: なぜ手をよく使うと肘関節の外側に痛みが生じるのか?
・肘の外側には、上腕骨外側上顆という箇所があり、ここに前腕伸筋群が付着し、
前腕の後ろ側と手の甲側を通り、指先まで行きます。
・前腕伸筋群は、手首を甲側に曲げ(反らし)たり、指を伸ばしたりする作用があります。
・繰り返し手や指を伸ばしたり、手を使いすぎることが原因で、
前腕伸筋群の筋肉が繰り返し引っ張られ、
上腕骨外側上顆に付着する伸筋群の腱に炎症が生じて肘の外側が痛むといわれています。
・前腕伸筋群の中でも主に短橈側手根伸筋が痛めやすいといわれています。
<前腕伸筋群の構成>
*右腕を後ろから見ている図
<短橈側手根伸筋の損傷>
*右腕を後ろから見ている図
3: 診断方法は?
X線では異常所見を認めることが難しいため、以下の徒手検査を行います。
・トムゼンテスト:
患者さんの肘を伸ばした状態で手首を背屈(甲側へ曲げる・反らす)してもらい、
検者は曲げた手首に抵抗を加えていきます。
この時に肘の外側に痛みを感じれば上腕骨外側上顆炎と判断します。
・チェアーテスト:
患者さんに肘を伸ばしてもらい、その状態から椅子を持ち上げてもらいます。
この時に肘の外側に痛みを感じれば上腕骨外側上顆炎と判断します。
・中指伸展テスト:
患者さんに肘と手を伸ばしてもらい、検者は患者さんの中指に抵抗を加えます。
その状態から患者さんに中指を反らすように伸ばしてもらい、
肘の外側に痛みを感じれば上腕骨外側上顆炎と判断します。
4: 治療方法や予防方法は?
・患部の安静。
・原因となる日常生活動作やスポーツの一時中止。
・スポーツや作業後に肘を氷嚢などでアイシングする。
・エルボーバンド*(テニス肘バンド)やテーピングなどで負担を軽減。
* エルボーバンドは痛みのある個所より指1~2本分程度手首側の部分を
圧迫することにより、短橈側手根伸筋の牽引力を抑制し、肘の負担を軽減するものです。
予防方法としては、手首や指のストレッチを行います。
① 痛みのあるほうの腕の手を甲側を上にした状態で、腕をまっすぐ伸ばします。
反対側の手で手の甲部分をつかみ、ゆっくり手首を手前に曲げてストレッチします。
痛みのない範囲で10~20秒ほどストレッチします。
② ①と同様の状態で、手の指をつかみ、ゆっくり手首を手前に曲げてストレッチします。
または手の指を後ろ(甲側)へ反らす方法もあります。
こちらも痛みのない範囲で10~20秒ほどストレッチします。
治療期間は、痛みや炎症の程度によりますが、軽度であれば数週間、重度であれば半年から
1年程度かかる方もいます。
今回のブログ担当も、長年のデスクワークで両方の肘の外側、
前腕の肘関節少し下の外側に痛みがありました。
最初は、軽いしびれ程度でしたが、特にケアもせず放っておいたところ、
徐々に痛みが強くなり、その痛みも重い鈍痛に変わり、肘を曲げる、
手や指を動かすのも辛い状況でした。
最終的には手を使っていない安静状態でも前腕の痛みや重さを常に感じていました。
今でも長時間のパソコン操作などでは、腕の重さを感じることがあり、
前述のようなストレッチ、前腕の痛みのある個所へのマッサージや親指で押さえるなどして
症状が徐々に軽減するまで2~3年程度かかりましたが、
今では安静時の痛みはほとんど感じることが無くなりました。
最初は痛みが小さくともいつも通りの仕事、作業やスポーツを
特にケアをせずに継続的に行っていると、徐々に症状が進行していきます。
痛みが2週間以上継続する場合やストレッチを行っても症状が良くならない場合は、
肘関節周辺だけでなく、手首や肩関節、首や背中の問題がある可能性も考えられますので、
その場合は、早期に医療機関を受診するようにしてください。