肩痛について

今回は“肩”について。
皆さんは、「肩が凝った」とか「肩が痛い」など少なからず経験があると思います。
肩の痛みが強くなると、肩が上がらず棚の上の物が取れない、
女性であれば髪を整えられない、結べない、手が後ろ(背中)に回らず着替えをしにくいなど
日常生活に影響が出る方もいます。
1.肩は3次元的にあらゆる方向に動く
一口に“肩”と言ってはいますが、一体肩ってどこからどこまでなんでしょう?
解剖学的な話をしますと、
肩を構成する骨は、鎖骨、肩甲骨、上腕骨の3つあります。
また、関節となると、肩甲上腕関節、肩峰下関節、肩鎖関節、胸鎖関節、肩甲胸郭関節と5つもあります。
一般的に言っている肩とは、肩の動きの中心となる肩甲上腕関節(以下、肩関節)のことを指します。
肩関節は肘や膝のように曲げたり伸ばしたりという単純な動きではなく、
・腕を真っ直ぐ前方へ上げる
・腕を後方へ上げる(引く)
・腕を体の横に開く
・腕を体の前へ振る
・肩を回す
など3次元の多方向に大きな動きをします。
2.肩関節は不安定だ
肩関節は、肩甲骨にある関節窩という浅い皿状の凹んだ受け皿部分に上腕骨の球状の骨頭がはまっているのですが、
可動性が大きい分、骨と骨の接触面が小さく、また腕の重量もあって関節窩から上腕骨が動きやすく(ズレやすく)不安定です。
その不安定性を補うため、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の4つの筋肉で構成される回旋筋腱版(ローテーターカフ)で
上腕骨を関節窩へ押し付けることで安定性をもたらしています。
3.肩の痛みについて
肩の痛みを感じたときや腕が高く上げられない、と言われて真っ先に浮かぶのは、四十肩や五十肩です。
40代~50代以降の方に多く見られることから四十肩・五十肩と呼んでいますが、肩関節周囲炎の別名です。
① 原因は?
肩痛の原因はまだまだ分からない点もありますが、下記の原因と考えられています。
・加齢による肩関節周囲の筋肉の拘縮(筋肉が縮んで固くなった状態)
・肩峰下滑液胞や肩甲骨と上腕骨を連結する筋肉の腱の挟み込み(インピンジメント)
・回旋筋腱版の損傷や断裂
挟み込み(インピンジメント)のイメージ
② 症状は?どんな痛みなの?
主な症状としては、特に肩の前面や奥のほうの痛み及び上腕部など肩周囲の痛みがあり、
急性期では、突然に肩周囲に強く、鋭い痛みを感じ、肩を動かすたびに上腕や手先まで痛みを感じることがあります。
痛みの強い方では、昼夜問わず痛みが継続し、夜も眠れない場合もあります。
慢性期では、急性期のような鋭い痛みから、徐々に鈍い痛みに変わってきます。
また、肩の可動域(動かせる範囲)が狭くなってくることがあり、
洗濯物を干す際に腕が上がらない、エプロンの紐を結んだり、
体の後ろにある物を取る際に肩や腕が後ろに回らないなどがあげられます。
③ どんな治療方法があるの?
病院や整形外科では、痛みの強い急性期には肩に負担をかけず安静を保たせるようにし、
痛みを取り除くための注射や薬の処方、湿布などの貼付剤を使用したりします。
慢性期では、肩関節の可動域改善のため、
肩を積極的に動かす振り子運動など運動療法や、
同時に温熱・寒冷療法や超音波療法を組み合わせて痛みや筋の拘縮を取り除いていきます。
接骨院などでは、痛みを伴う運動や作業は避けて安静にするようにし、マッサージなどの手技療法、
寝る際には痛みのある肩を上にしたり、抱き枕などを使用するなどの指導を行っていきます。
ある程度痛みが治まってきた慢性期であれば、体操、筋トレ、ストレッチ、振り子運動などの
運動療法を行い、肩の可動域を徐々に広げていくようにします。
また日常生活での姿勢を注意するなどの生活指導を行っていきます。
④ 予防はできるの?
四十肩、五十肩の予防としては、運動不足にならないことが重要です。
最近では、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業やテレワークの普及の結果、
20代~30代の若い世代でも四十肩・五十肩と同様の症状を訴えることが多くなっています。
これには、長時間座ったままでいたり、パソコンやスマホ操作などで背中が丸まったまま、下を向いたままなど
動かずにいることや姿勢の悪さが起因しているものと考えられています。
普段から肩を動かすストレッチを行うようにしましょう。
肩を動かすストレッチ:
・両腕を前から万歳するように上げて、耳の横につけてからおろす。
・両肩をすくめたり上げ下げする。
・両肩をぐるぐると回す。
・片方の手で、反対側の肩をつかむ等
“痛み”は体の不調を知らせる重要なサインです。
痛みから肩や腕を動かさないでいると、筋肉、靭帯、腱が固まり、
肩や腕の関節可動域が小さくなるだけでなく、完全に腕が上がらなくなってしまいます。
痛みが2週間以上継続する場合は、我慢をせずに医療機関を受診するようにしてください。